●;近づく本、遠ざかる本(1)

●;「本」は人である。当たり前だ。その「本」の存在を何かで知る。どこぞやのメディアが薦めていたり(誰かの)「引用」や「評価」が加わったり〜を知らされると、その「本」が気に掛かる。大概の「書評」は、秋波だ。じゃあ、その本をすぐ求めるかというと…

●;逃げた男もいるが、逃げた女も

●;大正末の犯罪事件史の一齣に山中を逃げまわった男の捕り物騒ぎに「鬼熊事件」がある。情婦の間男を殺害して山中を43日間逃げ回った鬼熊。この事件を知ったのは近くのそば屋などに置いてあった世界画報社のグラフ誌「日本近現代史」などだ。傲岸不敵な新撰…

●;《逃げる男》

●;クラウチ氏の《逃げる》おススメ本は『逃げる兵 高射砲は見てた』(渡辺央憲・文芸社)。(古処誠二(こどころ・せいじ)『遮断』(新潮社)は、当方の誤認、失礼)。 ●;同氏のコメントに浅田彰『逃走論』(ちくま文庫)というのもありましたね、と。確…

●;逃げた男列伝

●;吉村昭の『長英逃亡』(新潮文庫)に心惹かれた訳ではないが、歴史上《逃げた男》に関心が赴く。《逃げる》は、日常生活でもごく否定的に卑怯といったマイナスのニュアンスで使われる。唄の文句ではないが「今日でお別れね」と女に言われそうになった場合…

●;地霊;吉村昭《逃げる男》(1)

●;鈴木博之氏の『東京の[地霊]』(文春文庫)、『日本の地霊』(講談社新書)ほかで教えられたのだが、ゲニウス・ロギ>(ラテン語)という概念がある。精霊というのだろうか、その場所に漂っている精気のようなもののこと、経験的にもそこに蓄積されている…

●;新聞の白抜き見出し

●;新聞印刷技術史を紐解けばいいのだろうけど、「白抜き文字の見出し」がいつの頃から使用されたのか知らないが、は大きな「白抜き文字」の見だしが使われ、加えてモノクロ写真といっしょに構成される。新聞社整理部が作り出す構図、「視覚のデザイン政治学…

●;「本」から本」へ(2) 古井由吉『辻』(新潮社)

●;古井由吉『辻』を読み耽っている。この本の存在は知っていたが、「中井久夫を記憶の人」と記していた斎藤環氏の「本」から飛んで「記憶の人」ならと、古井氏の「本」へ飛ぶ。 ●;「辻」とは二つの道が十字型に交差している場所。何かとせわしい人の通りが…

●;「本」から本」へ(1)

●;奈良の放火殺人事件に格別の驚きや感慨がある訳ではないがについてを通俗的ではなく、きっちりと掴まえたくなり、たまたま、斎藤環『若者のすべて』(PHP研究所)を手に取る。仕事になるかもと、小さな準備の面も少しはある。某社の編集長氏との雑談で「…

●;金曜日、一日中ダベる

●;前の会社の後輩氏に同僚デザイナー氏の「作品集」(ロゴタイプなど)見せられる。先週だったか、後輩氏らに引き合わせた某社の女性が渡された「会社案内」を見て「ワー、オシャレ!」などと呟きながらしげしげとそのパンフレットのページをめくっていた。…

●;「ブックオフ本」一読(2)

●;家近くの「ブックオフ」で須田伸『ブログる!』(アメーバブックス)、池田信夫『ネットワーク社会の神話と現実』(東洋経済新報社)の2冊を210円。隣りの「ヴェローチ」でページをめくる。須田氏の本はタイトルも装幀も本文の組み方も「ちょっとなんと…

●;「ブックオフ本」もいい(1)

●;一時期、「ブックオフ」は業界人の評判が悪かった。店員さんの異口同音の甲高い「いらっしゃいませ!」のかけ声はヤな感じだとか、本は目方で買っているとかの声がかまびすしく囁かれ「大量生産-大量配給の出版システム」(80年代〜90年代の過剰生産業界…

●;昭和天皇(3)

●;昭和天皇について関心が生まれたのは、玉音放送の中の一句、「五内に裂く」にある。 朕は帝国と共に、終始東亜の開放に協力せる諸盟邦に対し、遺憾の意を表せざるを得ず。帝国臣民に>して、戦陣に死し、職域に殉じ、非命にたおれたる者、及びその遺族に想…

●;昭和天皇(2)

●;「昭和天皇」にとりたて格別の感情はない。反発心もなければ、ひれ伏すような思いもない。戦後、戦前のような「視覚的支配」「時間的支配」の波を学校現場や地域で洗礼を受けなかったせいもある。旗日に「日の丸」など掲げるとか、天皇家の肖像写真を飾っ…

●;昭和天皇(1)

●;昨秋の総選挙あたりの小泉首相の絶叫(的)演説を延々と映し出したテレビなどは一種の「視覚的支配」であろう。「視覚的支配」というコトバは原武史と保坂正康『対論 昭和天皇』(文春新書・94刊)から拾ったのだが、「時を統べる王」であった昭和天皇の…

●;『下流社会』を巡って(2)

●;別に読書会(オー、大嫌い!)をやった訳ではないが『下流社会』という本について少しばかり議論をしたが、議論する前後にこの本に言及する声を聞いた。ある人は「なんかこの本を読みたくなかった」という声であり、もう一つは「トランス・ビュー」が発行…

●;『下流社会』(三浦展・光文社新書)

●;コンテンツ業界の一隅に居る若い人とたちとの「議論の場」として長く設営している「わいがや;②」で三浦展『下流社会』(光文社新書)を取り上げた。コンテンツ業界も「社会の流動化」によるさまざまな変容を強いられているが、当然、耳目を集めたベスト…

●;《場について》(2)

●;最近、「(何かの仕事で)ライブドアへ行って来ましたよ」と話しかけた人がいる。たまたま、六本木ヒルズより離れた場所にある「人」を訪ねこの異様に圧迫感のある名高いヒルズを見上げて歩いたことが重なり(その時、俺らとは無縁な場所だなと思いはした…

●;《場》について(1)

●;「人」だけではないのだが「他」から影響を受けることで「私」があると思っていてなお「お人好し」が輪にかけてネットワーク的な動きに精を出してしまう日頃(またその場の形成について理屈づけたりするが)。友人と話をしていて、つくづく「場」について…

●;訃報(1)

●;悩み事というほどではないが、仕事上の進捗具合がイマイチだったこともあったし(予測の甘さが原因しているのだが)出かけなくてはならぬ得意先での仕事の段取りなどを思案していた重たい朝、モーニングショウが伝える犯罪事件などをテレビで見ながら素っ…

●;保守派という人々(2)

●;前から気になっていたことがある。いわゆる「玉音放送」が、どのように当時の人々に受け取られたかである。 朕は帝国と共に、終始東亜の開放に協力せる諸盟邦に対し、遺憾の意を表せざるを得ず。帝国臣民に>して、戦陣に死し、職域に殉じ、非命にたおれた…

●;通俗用語辞典(8)…「保守派」という人」

●;「私、保守派です」と名乗る「人」がいる。今時「左翼」も「右翼」も名乗ることのピンボケぶりは笑っちゃうのだけれど「左翼」勢力(例えば50年代ぐらいまでは「東側世界」が想像的共同体として理想化されていた向きがあったし)が旺盛だった時期にその勢…

●;通俗用語辞典(7)…戦略的

●;「人」がいとも簡単に「戦略・戦術」というコトバを口走るのが不思議でしょうがなかった。会議の席上などでだ。「戦略・戦術」共に「軍事用語」なのにである。まして大学を出たばかりの若い女性が「ワタシの戦略としては…な」などと入ったばかりの会社の…

●;戦後意識について(2)

●;敗戦時丸山真男ら壮年のインテリ兵士と当時の「青少年」だった人々わずかの後発世代の吉本隆明や橋川文三らが著した「本」で知らされた。

●;戦後意識について(1)

●;戦争直後の国民の意識について若干の「認識の差」を仄聞する。60年安保闘争を支えたものに、敗戦後の国民の「非戦意識」があったという説がある。そうでなければ、あんなに広範な大衆運動はおこらなかったという説に繋がる。当時の独立左翼らの「功」を…

●;含羞について(1)

●;山折哲雄氏の本は『美空ひばりと日本人』(PHP文庫)だったと思う(文庫版は絶版か。増補版が現代書館から出版されている)。この本は(確か)日本人と韓国人の「含羞」の差について書かれていた部分があったと思う。なぜ、この本に近づいたのかも忘れて…

村上春樹氏と安原顕(3)

●;内田樹氏が「文藝春秋」の村上春樹エッセイについて「プログ」で書いている。 氏が「引用」している箇所を再引用すると、 「僕は一度も会社勤めをしたことがないので、『中央公論社の社員』という肩書きがどれくらい大きなものなのか、それが与えてくれる…

●;村上春樹氏と安原顕

●;村上春樹氏の文章を「初めて読んだ」と記したら、「意外!」とかの声がWEB上にあった。私のことを知っている人らしいが、そんな反応が出るのもこの作家が多く読まれている証左であろう。その方々には常識だろうが、私には「それがない」だけである。100円…

●;村上春樹のエッセイ(文藝春秋)

●;村上春樹氏の文章を読むのは初めて。ある日の新聞が「文藝春秋」(06-3月号)で氏が編集者に渡した手書き原稿が古書店などで売り裁かれていることに抗議しているかのように伝えていた。とっさに「あっ、安原顕のことだな」と、思った。「文藝春秋」を読む…

団塊、二人の死…(4)

●;地下鉄の車中で「M」が(一時)所属していた管理職ユニオンの設楽清嗣書記長を見かける。(相手は覚えていないだろうけど)「貌覚え」はいい方なので、つい声をかけた。役者にしてもいい貌の持ち主である。タフなネゴシェイターという感じ。獲物を襲う動…

団塊、二人の死…(3)

●;「私ら‘団塊世代’ですぅ〜」みたいな言辞を吐く連中は、身近には一人もいなかった。そう名乗ること自体がダサイ。気恥ずかしい。「ようそんなこと言えるな」という感情である。若い時、たまさか、飲み屋などで「戦争へ行った我々に比べれば、お前ら根性が…