●;「ダンボールハウス」という本

●;知り合いの編集会社で人を待つ間、出されたお茶など飲みながらその会社の書棚の「本」を眺める。建築関係やデザイン雑誌のバックナンバーがきれいに揃えられている。「書棚」もまたよく<編集>されている。『ダンボールハウス』(ポプラ社・05刊)という本が目に入った。1年前ほど前かの「現代思想・90年代特集号」で平井玄氏が美大生たちによる「ダンボールペインティング」という小さな運動をとり挙げていたのを覚えていて、たまさか《居場所》についての「企画めいたもの」を考えていることと重なり、「ダンボールハウスの本か」と手に取る。200頁にも充たない薄い本でカバー表紙がダンボールの色に似せた紙を使っていて、当然のような仕様。
著者は長嶋聡氏で、この時点で中部大学建築科に在学中の学生。ゼミの先生たる五十嵐太郎氏の解説を走り読む。長嶋氏の収集した「ダンボールハウス」(名古屋の都心)…愛知万博のために全ての「ダンボールハウス」は撤去されたそうだ。「ハウス」のスケッチ(細密でいい)と取材データなどは、今和次郎の(ような)仕事だと評価していた。《私らは「家」を「所有」する欲望を起点に、購入するが、ホームレス諸君は「家」を「構築」している》という記述に「ハッ」とする。「そう、構築なのだ」と。