●;二つのドキュメンタリー

●;週末、NHK-BSで二つのドキュメンタリーを立て続けに観た。(正確なタイトルは失念したが)「ロシア司法・警察の腐敗」と題したドイツのドキュメンタリー作品(2003年)で、もう一つは「よど号事件;ソウル金浦空港管制官との通信記録」をスクープしたNHK作品か。いずれも現在的な生々しい映像であった。前者は「ロシア司法・警察」の腐敗ぶりをつぶさに描いていて、思わず「ひでぇな」という感想を持つ。後者はつい30年ほど前の「赤軍派日航機ハイジャック事件」を髣髴させるもので、韓国と北朝鮮、米日の緊張が溢れるもので、まさに現代史そのもの。30年前とはいっても「よど号」が福岡・板付空港を飛び立ちソウル〜平壌に至るまでドキドキハラハラ感は、つい昨日の事件のように思える。一緒にテレビを観ていた同僚が「飛行機の中はもう一つの国家だ」と言い切ったのを覚えている。今、北朝鮮をめぐる「有事」をバネに騒ぎ立てているだけに、リアルな感じがあった。
●;衝撃的だったのは、「ロシア司法・警察の腐敗」。喰うに困った農婦は近くの農場の鶏を盗んだだけで監獄に何年もぶち込まれる。ロシア社会に棲息する無頼の裁判官や警察がグルになっている。カネがある「無頼」はすぐさま釈放される。
二三日前の「わいがや」という集まりである大学講師が「ロシアや中国などの退廃は何に帰因しますか?」「組織の運用ですか?マルクス主義に帰因していますか?」という設問があり「運用でしょう」と答えた(つもり)。その残滓感が反応したのだろう。整理した本棚からゴミ本として捨てずにおいた内村剛介『ロシア無頼』(高木書房・80年刊)を引っ張り出す。本文の紙が黄ばんでいるのはしょうがないし、装幀も二流の感じの本だが、太田昌国氏が現代企画室のHPで、この本を読んで「内村氏は荒れている。以降読まない」と否定的な評言をしていたが、たしかにその匂いはある。ロシア革命にロマンチシズムのひとかけらもない内村氏は、デスペレートだ。「ロシア無頼の淵源」は「レーニンボルシェヴィキにある」とまで言っていた。「革命の敵は殺せ!」という論理か。メンシェヴィキもクロンシュタットの叛乱もソビエト権力もぶちのめした。カンボジア虐殺の遙か昔、ロシアでは1500万以上の人々が撃ち殺された。レーニンスターリン治世下でだ。学習したヒトラーは東欧〜に散在していたユダヤ民族を‘科学的に’殺戮した。