●;気になる言説(3)

●;解読する訳ではないが松本健一氏の本『思想としての右翼』(論創社・00刊)で教えられたところあり。蒙を拓かれたのである。ボンヤリと通俗的な理解で済ませていた事柄が「ああ、そうだったのか」と。このあたりは感謝したい。もったいぶった書き方だが、若くして北一輝研究でデビューした松本氏の「北一輝の発見・発掘」は、残る仕事であろうが、歴史家というよりは、(失礼ながら)北一輝に拘泥する史伝作家という印象が抜けがたい。史料があれば、次々と「本」を編み出すジャーナリスティックな「人」という感じ。
●;首相に経綸を求めることがアホらしく感じさせたのは、ポピュリズムという政治手法を使わざるを得なかった「大衆社会」下の小泉総理だったが、後継の安倍首相の「ナショナリスト」的な言辞を掴まえて「昭和の妖怪のDNAを受け継ぐ男」といったわかりやすい言説がはびこっている(例えば立花隆)。こういう、わかりやすい、糊口に昇りやすいコトバは、実は何も語っていないのに等しい。