場所(2)…NEO NEO座

●;神田小川町の「NEO NEO座」で観たTVドキュメンタリーの感想など。
・「チッソ株主総会」(NHK特集、70年)…迫力は患者家族たちが株主総会に轟かせる御詠歌。「怨」と記した白抜き文字の幟、長髪の支援活動家の姿はかつての日々と思うと懐かしかったが、それよりも「御詠歌」を唱って株主総会に登場する戦術を生みだした運動体にクリエィティブ性を感ずる。カメラはその「斬新な瞬間」を捉えていた。チッソ・江頭社長や総会屋たちがたじろいだのは、「お怨み申し上げます」とくぐもった「声の束」だろう。権力側がヒヤリとするのは、<量的に対抗的なもの>の出現ではなく、魂が揺さぶられるような「表現」というやつだろう。白装束の御詠歌集団という異様さをひねりつぶせなかったのは、死者の地の底からの唸り声、その轟きか。ハンセン氏病患者らが政府に立ち向かった時もそう。顔を背けた方が「負け」になる。補償(法)を約束したポピュリスト・小泉は「異様な質」に腰を引いたのだろう。ちょっと気になったのは、画面に登場した石牟礼道子さんが「さぁ、患者さんたち。聞いてもらえたから帰りましょう」と言ったコトバ(正確な採録ではないが)。後年、谷川雁によって批判された患者を<聖なるもの>として崇めてしまう彼女の心性が垣間見えた…処女作も『苦界浄土』だったな。早トチリかもしれぬが。
・「密航」(〃、80年)…今から20年ほど前の話、90年代、日韓関係は「観光」「買い物」「映画」などで<近く>はなったというものの、この時点では「暗い現実の風景」であったろうが、記憶に残るショットは、玄界灘の船上で髪振り乱して制作意図のイントロを語るデイレクター氏の番組を作る必死感は伝わって来る。
・「二つの祖国…中国残留日本人孤児」(〃、86年)…喫茶店で油を売っていて途中から。そのせいで、印章に残るものはない。悲惨さのえぐり方が足らないなぁ。キツいコトバで言えば、メロドラマじゃん。私ら視聴者が想像する「予定調和的な」なシーンを超えるものを提示してもらいたかった。
・「命もえつきる時…作家檀一雄の最後」(〃、87年)…『火宅の人』も読んでいないし、檀一雄が文壇でもてはやされたのがよくわからないので(失礼ながら)退屈。前作品ともデイレクター片島氏のことは「三鷹事件」というドキュメンタリー作品でお名前を知ったし、その執念の大著も手にしていたから、ちょっと予想が外れたせいもある。
・「宋姉妹…中国を支配した華麗なる一族」(〃、94年)…ドキュメンタリー作品ではなく、映像資料と中国人役者たちの演技を編集した「映像ドキュメント作品」。知らなかったことを教えられたが、すごいショットの発見はない。