●;場所(1)…NEO NEO座

●;知り合いの元NHK氏に「私(ら)のドキュメンタリーの上映館があるよ」と教えられた。その元ディレクター氏に何度か会ってはいるものの、やや<重たい人>でその風圧を受感するのは、彼と私の教養の「差」の歴然たるものに「負け」てしまうこともある。読んでいる本、見た映画の読み方の「差」を通告されて判決に従う被告気分になる。表層的、ミーハー的、断片的にしかコトバやショットを読みとっていないせいで、一流打者の前で怖じ気づく草野球選手のようなもの。気後れというヤツか。氏はいつもインタビュアーのようだ。「それで〜」、「それで〜」と。ドキュメンタリストとしての氏を尊敬するほど彼の作品を見ている訳ではないから(つまりシロートの視聴者)、感想を問われてもましなことは言えない。それで沈黙してしまう。<重たい>の逆は「自由」だ。
時折、若い人と一緒に会ったりもした。彼(女)らを防風林として扱った訳でもないのだが、「面白い人なんだけど」と娘のような世代の女性を誘って会ったこともある。彼女らだっていっぱしの人間。歴史的な知識や見識不足を彼から差し込まれて気持ちのよかった訳ではないだろうが。
●;チラシを貰った時は、PR映画会社の若いプロデューサー氏を誘った。「プロデューサーといっても営業ですよ」と言う。かつて偉かった人に後ずさりする弱さを垣間見せたが手強いベテラン氏に会わせるのもいい。上映日は土日で約12時間。タフでなければつき合えない。
日曜日に彼が作った「密航」(NHK特集、1979年)が上映される…一度、彼の自宅で見たことがあるがテーマのアクチュアリティは感じたものの、強い映像の記憶は残っていない。冒頭のシーン、髪振り乱して玄界灘の船上でマイクを持ってイントロを語るディレクター氏の風貌はいい。大島渚に似ていると思ったくらいだ。
●;「NEO NEO座」は、神田小川町交差点際の小さなビルの一階にあった。大きなビルの谷間にあってしもた屋風の印象を持った。500円の参加費を払って小さな薄暗い会場に入る。30人ほどの人が一心にスクリーンを観ていた。目が慣れて会場で人を探す。「行かねぇか?」と誘った女性は寒いこともあってかエスケープしたらしい(ま、そんなものだろう)。前の席に童女のような顔の持ち主の森まゆみさんがいた。PR映画のプロデューサー氏も顔を見せていた。
・「チッソ株主総会」(NHK特集、70年)・「密航」(〃、80年)・「二つの祖国…中国残留日本人孤児」(〃、86年)・「命もえつきる時…作家檀一雄の最後」(〃、87年)・「宋姉妹…中国を支配した華麗なる一族」(〃、94年)と立て続けに観る。5時間ほどの寒むさに耐える。(後で知ったが)森まゆみさんは、二日間全ての作品を観たらしい。タフだなぁ。