●;『創造力の掟』という本(1)

●;『創造力の掟』(剄草書房・96年刊)という本がある。著者は角田健司さんという編集者で一緒に働いたことがある。編集者が著した本は<業界本>というジャンルに括られる。そして出版業界人が「出版記念パーティ」(最近、誘われること少なくなったな)を催し「芸談本」として褒めそびやす制度的な儀式(でもないか)が行われがちだが、それにしては書いた著者の年齢が若すぎた。
屋根裏部屋からこの本を引っ張り出す。キッカケは名越康文という精神科医のテレビでの談話だった。日曜夜の「スタメン」(フジテレビ)で爆笑問題太田光はヒカっている)と阿川佐和子(凡愚)が司会のトーク番組である。話題は例の「母親を毒殺しかけた少女」で、こういった事件が起きると容疑者をプロファイリングすると称してしたり顔(=演劇的な)の精神科医や犯罪学者のコメントにうんざりすることはかりだが、てっきりその手合いだと思った。
●;しかし、名越は自分の臨床例では〜と前置きして、リストカットする少年や少女らにはある特質があって「視覚能力がとみに強い」と言う。結論としては身体論的には自他に対する痛覚を失っている「現在」のヒトコマだ、と(名越氏発言の正確な再現ではない)。「視覚化している人々」というのが、その場でキーワードになった。その発言に乗じて太田光が「イラクでバンバン人が死んでいるのに人ごとだと思っている」みたいなことを騒々しく語る。