選挙後をめぐる言説(2)

●;三浦雅士氏が岩井克人氏との対談で《グローバル化、IT革命、金融革命といわれているものが、資本主義全般において利益率が低くなっても経済主体が十二分に活動できる状況が生まれつつあるということなのに、日本においてはそれが逆に高利益率をもたらすものであるかのように喧伝されてしまったということ》と言うくだり(「大航海」誌)を読んだことがある。正直いって名著といわれる岩井さんの『ヴェニスの商人資本論』(筑摩書房)は単行本が出た時に買ったのを忘れて文庫版を2冊も(まちがって)買ってしまったが、まともに理解しえた感じがしない。こっちの思考能力のなさにつきるのだが、『会社はこれからどうなるのか』(平凡社)が評判になって回りの人が「いい、いい」とか言うのを遠くで聞いていたものだ。この対談は、その本が話題になった頃に催されたものだが、さすが整理王の編集者というべき、三浦雅士氏がよくリードしている。
●;「あいつは市場原理主義者だ」みたいなレッテルを貼る学者や評論家、また巷でもけっこういるけれども(岩井さんの孫引きになってしまうのだが)それらを批判したくて記しているのではない。現代資本主義は世界の隅々、果てまで「市場化」「商品化」し尽くすものである。それは企業間競争、商品化競争が「差異化に次ぐ差異化」という現れをせざるを得ないところに来ているというのは、自明の前提の事柄だという認識に立つ。