尼崎の電車事故報道(7)

●;ある書評新聞でジャーナリストの天笠啓祐という人がJR西日本福知山線事故について10の問題点を指摘していた(「図書新聞」05/5/28)。
要約して抜き書きすると、
①事故には必ず背景がある…大規模なリストラが労働現場で過酷な労働条件が強いられ、抵抗体としての組合の機能停止状態という背景があった。
②事故はしばしば新しい分野、思いがけない分野で起き、想定される範囲を超える。
③事故は繰り返される…事故がもっとも起きやすい時期は油断した時。
④大事故は日常的な小さな事故の積み重ねで起きる…「ハインリッヒの法則
⑤事故は連続して起きる。
⑥事故はいくつかの要因が連続して起こる…「事故のドミノ理論
⑦事故にはヒューマン・ファクターがある。
⑧事故は最新鋭といわれるものほど起きやすい。
⑨事故はいつも隠蔽・捏造・改竄が行われる。
⑩事故の基本にあるのは「安全性はコストに規定される」…経済性(生産性)を追求する際に最初に削られるのは「安全性」や「環境への配慮」などを「余計なコスト」だという考え方。
●;天笠氏は「起こるべくして起きた事故、今回も例外ではない」とまとめている。私らの床屋談義を凌駕しているコラム。
「個人情報漏洩!」といった新聞記事が日常的に目にする。
この種の「漏洩〜事件」の裏側には(会社の、諸個人の)「背景」があり、
「新しい分野」であるが故の誤解と誤定義、
「繰り返し」「小さな事故の積み重ね」「連続的」に無自覚になっている体制、
ヒューマン・ファクター」…しでかすタイプの人って必ずといっていいほどいる、
「最新鋭なものほど」…不慣れなんだよな、
「捏造・隠蔽・改竄」…個人も会社も、
「(安全・安心)は余計なコストという考えかた」の諸要素がからまっている、
とアナロジーできる。
《生産性向上》という異口同音の唱え文句がくせ者である。「(安全・安心)」が大事だと頭では判っていても、「余計なコスト」だと思ってしまう経営者。なんだかんだとしわよせされる労働現場の悲鳴が組織化されずにいて、事故・事件を招き寄せる。