● 妙なメールが届く

●何日か前、妙なメールが届く。私のアドレスから空の内容のメールが<その人>に届いたと。一日何十本かのメールに目を通すし、何本かにはきちんと返信もする。やっかいな答えをしなければならないものもある。ちょっと親しい人からのほんの少しのお知らせメールでも、その人の声質が聞きたくなって電話することもある。出したはずのメールが<その人>に行ったかもしれない。同じ内容のメールを同じ人に二度送りつけたケースもある。操作ミスをしたかもしれない。おや、待てよ。なんとかというウィルスで勝手に人のアドレスを名乗ってしまうものもあると聞いたか読んだかが頭をかすめ、失礼しちゃったかなと思った。
「貴女のアドレスは存じ上げません」と、こっちの名前は明かさないで返信した。それっきりと思っていたら、二三日後に「これがご縁でメール交換しませんか」と来た。「おいおい、見も知らぬ人に簡単に<交換>もねぇだろう」と丁重にお断りした。また、メールが届いた。作為が見受けられる文体である。ミエミエのストーリーである。<淋しい人妻><夫に隠れてワクワクしている〜><夫にばれそう>とかとか。
●「個人情報」のセキュリティに関するちょっとした仕事の片棒を担いでいるが、尊敬する年下の同輩が作った営業トークに《個人情報は(知らぬ間に)捉えられ、漏洩されている》というのがあった。こっちのミス意識無意識までを組織化しようとする(なんだかわからないうちに)。捕捉されている。しかも、それはコミュニケーションではない。ただ、<非在同士>の、顔の見えない、声質が感じられない者がなんらかの幻想を媒介に繋がろうとする。このケースでの幻想は言うまでもなく<性的幻想>である。