●あるパーティに出かける

サントリー学芸賞をもらった黒岩比佐子さんの受賞を祝う小さなパーティに出かける。同期入社の人や彼女の上司だった人が呼び掛け人であった。(私が)中途入社した時には彼女は会社を辞めていて、いわゆる接点はない。そのPR会社の一部門に所属はしたものの、基盤事業たる採用支援PRというものがよくわからなかった。社長以下の若い連中が何が面白くて仕事しているのかがよくわからなかった。この会社にいた期間は<寄生>していたようなものだから、そのパーティに出かけるのには腰が引けていた。だが、行った理由の最大のきっかけは、呼び掛け人の一人が掛けてきた携帯電話の<声質>である。
●パーティ会場でいざ<生の声>に接っしてみるとなかなか感じるものがあった。聞き慣れた声質の持ち主の「あぁ、昔と同じ感じだな」とかの同調感がよみがえったのは事実で、その懐かしさの心地よさを感じたところではなく、なにとはなしに距離を置いて近づかなかった人の<生の声>を聞けたからである。「おぉ、こういうものの見方していた奴なんだ」「知らなかったなぁ」という<発見>があったことである。とりわけ、まともに話をしたことがないh君と顔つき会わせた言葉を聞いた時に感じた。これまではまともに眼を合わせて話をしなかったことにも気がついた。いままで<好き>でもなかった彼が好きになったのである。これが最大の収穫であった。
むろん、黒岩さん自身の挨拶もよかった。本の生成プロセスを長く語ったが、受賞作のイメージが沸き上がってきた。一言で言えば「飽くなき探求心の持ち主」という強い存在感の持ち主である。