●『選挙参謀』という本

●かつて働いていた職場の(年下の)同僚である前田和男くんが書き下ろした『選挙参謀』(太田出版)を読む。面白い。「選挙の本?なーにそれ」てな感じで読み始めたのだが、あっという間に読めた。文章にリズム感がある。おかしい人は登場しないが、熱い人ばかりが出てくる。大阪3区、03年の衆議院選挙に立った大学時代の友人弁護士を前田くんが選挙参謀になって(その役割を「一人電通」といってるがこのキャッチフレーズはあまりいただけない)、結果的に比例で当選するまでのドタバタ顛末記である。
選挙は人を熱くさせるところがあるのだろう。選挙活動の隅から隅までがいいも悪いも含めて人間的であり、「当選」という目的のために集団のエネルギーが発進される。チームの「組織化」、投票行動の「組織化」がカギ。そしてその泥臭いあれやこれやの結果は、明快な「○」か「×」の世界。天国と地獄、栄誉と失意、その劇場に前田くんも魅されたのだろう。本にはチャーミングな女も登場する。候補者の奥さんの応援演説の箇所もいい。候補者が達者な奥さんを評して「人たらし」というのがいい。専属応援団になってしまったキタのホステスの颯爽感が心地よい。
本には哀しいところが用意されている。それは「あとがき」。電車の行き帰りに読み耽ったのだが、最終章と「あとがき」は家近くの「ヴェローチ」で。なかなか家には戻りたくなかった。泣かされたからである。