●体が変調だが気分がいい

●早朝、足が吊る。目が覚めた。なんだろうこの痛みは。膝下の裏側がこむら返しというのだっけ、刻みつけるような痛さだ。明らかに吊っている。歩くのがやむむっとだ。みっともないが腰をかがめ引きずるようにして階下の風呂場に飛び込む。生ぬるい朝風呂の湯の中で足を伸ばす。筋肉痛だ。<疲れ>だろうと思う。何年か前にもこんなことが起きたが、それはいつも冬だった。相当に体がおかしくなっているのかもしれない。タバコの吸いすぎ、夜更かし。背負い込んでしまうももろの相談事。少ない稼ぎ。思い当たることはみなストレスの原因だ。「この野郎!」

昨夜の会議の「議事録」を綴る。A4一枚に納めるのがいつものパターンだが、そのためには言葉を縮める必要がある。会議の方向性を指し示す明快な言葉をひねり出さなくてはいけない。けっこう時間がかかる。

午後、神保町へ。昨日の続きがある。「待ち合わせ」時間を勘違いして失礼した人が、また会ってくれる。お詫びのしるしにチョコレートを買う。暑い日にこんなものはおかしいとは思うが、この街ではそんなにしゃれた店はない。洋菓子店は客で混んでいた。待ちされている客の苛立ちの小さな波が伝わってくる。50過ぎのいかにも店を仕切っている感じのベテラン女性が、入ったばかりであろう30過ぎのアルバイト新人に「てきばきやんなさいよ」といった口調。しかも連続的に。小さな意地悪である。ちょっと不快になる。確かに新人女性はのんびりしている。とろい感じがする。しかし、店先でいじめることはないだろう。

珈琲店入り口で某社の社長兼・編集長にバッタリ。「どうですか。いかが?」と聞かれる。「まぁ、昔も今も変わりがないよ」と答える。「お疲れのようですね」と言われる。あっ、そうか。体の変調を他人様はすぐわかるようだ。不調が顔に出ているらしい。足の痛みはとっくに消えているが、顔だけは人様には騙せない。

人を待つ間、某書店の総務部長氏に挨拶。「H君、入院しているんだってね」と様子を聞く。新宮市の見知らぬ人からのメールに「H君が入院中」とあった。「熊野誌・中上健二特集」を送りたいのだが、住所を教えてくれとあった。何年か前、H君とやったイベントでの「中上の講演記録」を収録したいと言ってきた。「別にどうぞ」と言っただけなのだが、その「冊子」はいつか届くだろう。今年は中上の13回忌か。

●「昨日の人」現る。久しぶりだが、えらくチャーミングになっている。生き生きとした表情にいささかたじろぐ。見惚れるというのはオーバーだが、言葉を見つけようとしながら考え考え喋ってくれることに感謝する。その顔を見ただけで「聞きたかった企画上の問題点」が氷解しかかっている。いい気分になる。