●警察署に入る

●朝方、近くの警察署に行く。入り口で胸の大きいことだけが印象的なフツーの女の子が寄ってくる。薄い茶髪、ポシェットを小脇に持っている。
「どちらへ行くのですか?」と誰何される。あっ、昼間の門番は女刑事の仕事なのか。彼女の顔の印象がない。こっちの直視を避けているようだ。女刑事は顔を喪失しているのだ。覚えられてはいけない職業なのだ。
「生活相談課です」と答える。「受付を通して下さい」と言われる。ここは一見、どこぞやの大きな会社の受付と同じだ。ただ、会社とここは違うのは、どんな立派な風体をした人間でも<法>に触れるような振る舞いは許しませんよ、といった無言の威嚇がある。

受付から3階の「生活相談課」へ。長いこと刑事をやったていて疲れ切って生気のない刑事が紙一枚を持って現れる。取り調べ室といったほどのものではないが、小さな机の前に座らせられて事情を聞かれる。昨夜と同じだ。
刑事はこんな相談が管内でも月10件はあり、103警察署換算すれば、月100件はあるという。掴まえることが出来ないのだという。
「なに?」
携帯を使った「捕まらない犯罪」が起きているのだという。警察が調べようにも追えない「犯罪」。とすると、自分で防御するしかないということか。「自警の時代」だな。