●短絡だけど藤原不比等

●恥ずかしい話だが、藤原鎌足を(記号的に)知ってはいたが、その息子である藤原不比等の名前を知ったのは、「新潮」だか「群像」に連載した橋本治の第一回を走り読みした時だ。「天皇制をかたち作ったのは、不比等である」といった記述であった。「ヘェ、そうだったの!」と。

気持ちがせわしいから、不比等についての本なぞ探さなかったが、ある時「プックオフ」に寄ったらその名前が冠せられた本が100円で売られているので買った。黒周紀一郎『覇王不比等』(作品社・95年刊)で、手にした本の奥付は6刷とある。その作者の名前も知らなかったが、三部作の一冊だったが、まぁ読んでみようと思った。いきなり歴史書を読むには素養がなさすぎるから、不比等という人物を概略わかるにはいいと思ったからだ。

読み始めるが、いささか物足りない。本の帯には秋山駿氏が絶賛していたが、通俗的というか、不比等の人物像が類型的と感じた。ただ、三部作の第一部だから、即断してはいけない。「権力の作られ方」に興味があるから手にしただけなのだが。