● 地下鉄のプラットフォームで

● 金曜日は気忙しい日。ある会社へ。剣の代わりに腰に差した警棒といういだちの門番氏(警備員)が来訪者をチェックする。「何を守るのかね?」と言いたくなるような厳めしさ。城塞のような本社ビルの受付で人を待つ。どんなに美人であっても侍女のような受付嬢の顔を覚えられないのは、失礼ながら彼女らが(そして来訪する私らも)「記号的な存在」であることを認め合う関係ということか、そんなことをしばし、考える。
案内されて○階かの応接室へ。プレゼンには説明バッターとして二人を用意した。キャスティングした彼らの実績だけが売りである。二人の資料を夜鍋で作ったが、出来映えが余り良くない。デザインが悪い。小心者には小さなことが気かがりになる。こっちは輪郭だけしかしゃべれなかったが、頭のよさそうな(つまりクリアな)若い担当者氏らへの1時間ほどのプレゼンは「▽」。「×」ではなかったことにホッ。相手の話に同調しつつ理解度があった同行者に感謝する。

午後、ある会議で「メディア」を作ることを提案。「面白いわ」といってくれた人の感受性に同志感を得る。会議を中座しある団体の研究会に出席するため急ぎ地下鉄で。プラットフォームでユウジンに会う。車中で二言三言しゃべるが、「ちょっと降りて話したい」と言われる。途中駅のプラットフォームで次の電車が来るまでの4〜5分間。会社のあれやこれやを聞かされる。経理の女性が辞めるのでこれからハローワークに行くのだとか、病後の旧い友人(私も知っている)が訪ねて来たとか、とりとめもない話。
「あんたのところに人が寄るのは、あんたに甘えたいからだよ」と言う(これはホントだ)。しかも、彼らは救済されたくて(と、言いたい)彼の会社に寄ってくる。
「場所だよ」と彼。
(いや、それは彼が創り出す「場」だと言いたい)
午後4時からの研究会でプレゼンするある会社の女性マネージャーに感心する。短い時間だったが、実に的確だ。一つだけ質問をする。「人材のデータベース」をどう構築するかに関心があるからだ。研究会終了後、名刺を差し出すと「お会いしたことありますね」と言われる。一瞬、思い出せない。
研究会に出席していた某社の社長とは、酒を飲んでもいいような関係なのだが、逃げるようにして家路へ。カミさんが旅行に行っていて、臆病な犬が私の帰りを待っている。