●また、江古田の酒場で

●2時間程の打ち合わせの後、10日ほど前の大衆酒場へ行く。前回と同じ場所に座る。広い店には、男子店員の中国人が三、四人。皆若い。ただ、酒なり食べ物の追加注文する時に、彼らが店全体を見渡していないことに気づく。目の前の職務については一生懸命だろうが、私ら日本人飲み客を包み込むように視ていないのか。むき出しの敵視や拒絶はないだろうが、<日本社会>にとけ込まないでいる彼らのよどんだ気配を感じる。「しゃくに障る」が口癖のハギノ教授が酒の肴の注文で店員にいろいろと問いかける。「困らせるような注文しちゃ、だめだよ」と、先輩をたしなめるトダ教授のユーモア。

話題1;三人とも沢木耕太郎の朝日の記事は読んた。「バカだねぇ、沢木は」で一致。「(内心の)物語」を描けるというのが沢木の売りだったけど、とってつけたような「物語」を勘違いしているというか相当にズレているのはなんだろうね、と。お二人とも「書くってのは大変なことだねぇ」と。それはほんとだ。

話題2;清水幾太郎についてハギノ教授が語る。いつかも聞いた話だ。清水の60年代当時のテレビ論が秀逸だという。「文学」の「現代テレビ論」の特集にも再掲載されていたやつだ。当方は、社会学者の清水の全盛期の本で特別に感心した記憶がないから格別の思い入れはない。教授は本所亀沢町出身で下町生まれ気質を気にしていて(としかいいようがない)、下町作家や学者を偏愛するところがある。「俺が町のスター」を身びいきする類で否定する気もないけど、まぁ、他愛のない話だ。従って話は盛り上がらないで終わった。