●父母の故郷へ

●父親の墓参り、常磐道を車で走る。父母が生まれ育ったところは那珂川沿いの農村だが、その周辺には、父母の甥や姪つまり私の従兄弟たちが多く住んでいる。水戸〜日立市市内や近郊の村でそれぞれがたくましく生活している。その同心円的に繋がる一族を形成している環は、<親族の噂>である。一族といってもさしたる名門でも名家でもない父方・母方の一家に共通しているものといえば、篤農家精神そのものの<働きもの>ということぐらいだが。<働きもの>たちの食卓や宴席に並ぶ最大の馳走は<噂>である。誰それがどうしたこうしたという話である。父や母の同級生たちは、ほとんどが亡くなっているから話題にならない。しかし、怠惰な一族の某、家産を費やしてしまった一族の某を誹謗し、朝から晩まで働きづめの結果、豪勢な家を新築した一族の某を褒めそびやす。

身近な他者に対する<噂>が彼らを元気にさせる。遠い一族でもいい暮らしをしている者、回りに影響を与えている人格者たちを所有していることが誇りになり、貶める存在が身近にいることもまた、自分らの存在証明になるということか。