●爽やかな人

●木曜だったかの朝、路上でK君にバッタリ。女性を表する旧い言葉に明眸皓歯というのがある。快い男を評することばには何があるのだろう。K君は「聡明快活」という男の部類に入る。快活無類という点では、金曜日の朝日新聞の「ひと」欄に出ていた南方新社のMくんが体験的に第一等であるが、Kくんには聡明さがつきまとっている。それは<クレバーな秀才>にとどまらず、それを超える<おおらかさ>を受感するものがある。<明るい人>ということにつきるのだが、そのオープンな感じというのは、今朝も感じた。暑いけれども気持ちのいい朝である。

日射しを避けたアーケードの下で立ち話を10分ほど。「ちょっと涼しいところで」と誘いたかったのだが、彼が出勤途中であることがわかったので(それでも)立て続けにしゃべる。Hさんというテレビ局出身の人の「大学講義録」を<本>にしたいという話を思いついた。今朝、彼とバッタリ会ったその瞬間に「あっ! 話をしとかないと」思ったのだ。

Hさんが某大学の特別教授になる頃から講義内容などの聞き役になっている。彼が教壇に立つのは初めてだから、素人の私に聞いてもらいたいのは、ある種の<不安>がおありかな、とも思った。<不安>なんぞひとかけらもないような剛毅な人と思っているのだが、そのあたりの真剣さは年上の人だが<可愛いい>感じがした。実際は彼なりの取材であろう。局外者の反応を確かめつつ修正していく方法意識があるとは思うが。
ドキュメンタリー番組などを多数手がけた人だから、彼が作った作品のビデオを前に学生らにレクチュアする。そんな光景を幾分かは想像てきてもレジュメについては特別な意見は生まれなかった。私の気を惹かなかった。

先月だったかに会った時に、レジュメをまた見せられた。幾分、学生らの感想まで見せてくれて、その点だけは自慢も入っていたが、あるページの「あっ」「へぇ」「ほう」というコンテクストに魅入られた。企画の原点はここにあるという。
「あっ」と驚くような事実(のファクター)、「へぇ」はその裏付け(取材) 、「ほう」は感動だという。「事実-論証-表現」のサイクルである。「データ-インフォメーション-インテリジェンス」のサイクルと受け止めた。「あへほ」論である。これを本にしてみたいとその時思ったのだ。

K君にメールを送る。「いつものように強引で失礼」というタイトルで。一日経って返事あり。「構想がまとまったら送って下さい」と。「構想?」これからこれから。瞬間」はせいぜい「あ」部類。